松本剛志の考えること
by matsumo5402
ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING ” TRANSMISSION ”_2日目vol.2
前回の投稿ではROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING ” TRANSMISSION ”2日目の昼のイベントに関してのレポートを行った。
この記事では夜のイベントSOUTH JAPAN STUDENTS MEETINGに関するレポートを行います。

■SOUTH JAPAN STUDENTS MEETING
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このイベントは藤村龍至という建築家をネタに議論を行うという主旨。
藤村さんより、かの有名な「批判的工学主義」と「超線形プロセス」、それらの成果である「Building K」のプレゼンテーションが行われた。それに際して、乗り越えるべきものとしての“力なき愛vs愛なき力”、“芸術(メディア)vs工学(エンジニアリング)”、“ランドスケープvsアーキテクチャ”というような、いくつかの対立概念が問題提起された。


会場との議論は、主に論理性と“イマジネーション”との関係を巡る話題であった。ただし、今回の議論で“イマジネーション”という単語はほとんど出てきていない。しかしながら会場は言語化されないが何かしらの共通の価値基準を持って議論を行っているように思えた。その“何か”とは空間を豊かにするための“何か”であり、ここではそれを“イマジネーション”と仮に言語化することにする。

まず僕が気付いたのは、藤村さん以外の会場の人々においては論理性と“イマジネーション”は結びつき難く、一方で恣意性こそが“イマジネーション”を担保するだろう、というような了解が前提としてなされていたことである。
このような了解は、藤村さんが「超線形プロセス」を実践する上でのコツとして提示した「do not think」「do not imagine」「do not look back」といったキーワードに触発され、一気に藤村さんの理詰めなプロセスに対する疑問として噴出した。

それに対して藤村さんの場合、空間設計における“イマジネーション”を、意味を発生させ定着させる構想力であるというような点に見出しているようであった。よって、論理性はイマジネーションと矛盾しないし、むしろ論理的であることによって他者とのコミュニケーションが可能となり、より多くの意味が生じてくるであろうというように考えているようであった。

この対立は“イマジネーション”を暗黙知と形式知のどちらの中に見出そうとしているかという違いであるように考えられる。しかしながらやはりどうしても僕が藤村さんに対して疑問なのは、形式知による“イマジネーション”における言語的な意味の濃密さが、人間のどのような回路を介して空間体験の濃密さに変換されてくるのかということである。この疑問は同時に、僕自身がこれまで空間に関して考えてきたことに対する批判でもあるのだが。


とにもかくにも近代以降の建築家は人々のコミュニケーションを発生させる装置を提案し続けてきた。
モダニズム期に顕著な、コルビュジェやアーキグラムやメタボリズムなどのように大きなビジョン(ゴールイメージ)を示して、そのビジョンを媒介してコミュニケーションを発生させるスタンス。政治的なコミュニケーション。
ポストモダニズム期に顕著な、ヴェンチュ−リなどのように建物の記号性に注目して、それに関する哲学を媒体としてコミュニケーションを発生させるスタンス。文学的なコミュニケーション。
そして現代日本建築で特に顕著であるような、壁や開口などを用いて物理的に人間の行動を制約することでコミュニケーションを発生させるスタンス。日常的なコミュニケーション。
などなど、いろんな水準でのコミュニケーションを発生させる試みを建築家は繰り返してきた。
現代に近づくにつれてコミュニケーションに参加できる敷居は低くなり、無意識的になると同時に、1つの建築プロジェクトが発生させるコミュニケーションに関われる人数は限定されていく。

藤村さんが目指しているのは、
建築ができる以前、計画段階において議論というカタチでコミュニケーションを発生させることで、再び1つの建築プロジェクトから生じるコミュニケーションに関われる人数を拡大しつつ、敏感に意識化させ、しかも敷居は低くしようというところではないだろうか。この部分こそが井手さんを始めとして彼らの同世代の建築家やデザイナーの多くに共通する性質であるように思う。

それに対して僕自身は、このようなスタンスには大変な共感をする一方で、やはり言語と空間体験であったり言語と建築形態であったりを媒介しているものは何なのかいうような抽象的で個別的な思考も大切にしていきたいと考えています。


関連:
1995年以後レビュー_1
1995年以後レビュー_2_自分編
ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING ” TRANSMISSION ”_1日目
ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING ” TRANSMISSION ”_2日目vol.1



author:松本剛志
by matsumo5402 | 2009-05-05 03:54 | 雲り
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