松本剛志の考えること
by matsumo5402
ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING ” TRANSMISSION ”_1日目
ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING” TRANSMISSION ”1日目のレポートです。

■デザイニング展
まずイベントの概要を軽く。

福岡市ではデザイニング展というイベントが毎年開催されています。ちなみに僕自身はこのデザイニング展の運営その他に全く関わったことがないので、ある意味でデザイニング展にとっての外部の人間であります。そういうわけで、外からの認識においてデザイニング展を簡単に説明します。

デザイニング展は福岡で活躍する建築設計事務所rhythmdesignの特に井手健一郎さんが中心になって2005年から始まったイベント。“デザイン”と呼ばれる領域と街(市民)の生活との架け橋を作りたいという問題意識を共通のモチベーションとしてたくさんの人間を動かしているイベントであると認識しています。運営の外部の視点から見ても、先に述べた問題提起に対して一定の成果をあげていることは間違いないでしょう。

少し余談を挟むが、この高い成果にはやはり福岡市(特に中心部)の街の性格が大きく寄与しているように思う。どういうことかというと、福岡市はよく言われるように非常にコンパクトな街であり、地区ごとに福岡市における役割というものが、わりかし明確であるように思われる。特に中心部においては顕著である。例えば少々乱暴に地区の性格をラベリングすると、博多地区=オフィス街、中洲地区=歓楽街/風俗街、天神・大名・今泉地区=歓楽街/ファッション性の高い街、というような分類は可能だろう。つまり、東京などのようにいろんな街にお洒落な人間がある程度均等に分布しているような状況に対して、福岡の場合ファッション、デザインに関心のある人種は天神地区周辺にまさに一極集中する傾向があるのです。だからイベントの中心を天神地区に置くことで、ハイファッションな人種を大量に味方につけ、力を得、それ故に大川などの福岡にとっての周縁部に対しても十分な働きかけができるのだろうし、主な活動内容が1つの地域の中の出来事としてクリアに一望できることがイベントとして継続し得ている要因の一つだと思う。そういう意味で非常にフィジカルなファクターに支えられたイベントであるように思う。もちろん主催者側のただならぬ情熱によるところが最も大きいことは言うまでもない。


■ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING” TRANSMISSION ”
ROUNDABOUT JOURNAL × DESIGNING” TRANSMISSION ”は先に説明したデザイニング展に際して行われる一連のトークイベントなのですが、デザイニング展の井手健一郎さんとROUNDABOUT JOURNALの藤村龍至さんがすべてのトークイベントに関わるということで、デザイニング展とROUNDABOUT JOURNALとのコラボレーションイベントという体裁をとるのだと思います。3日間で計5本のそれぞれテーマの異なるトークイベントが組まれています。(ROUNDABOUT JOURNALに関する概説や風評ははweb上で検索をすればいくらでも出てくると思うので今回は省略します。)



■TRANSMISSION KICK OFF
さて本題です。一日目のイベントはTRANSMISSION KICK OFFと題され、『今、何をデザインしようとしているのか?』というテーマのもと、スピーカー:井手 健一郎・藤村 龍至、コメンテーター:松岡 恭子 、モデレーター:平瀬 有人という構成にて議論が行われました。
イベントの中心人物である井手さんと藤村さんの2人がそれぞれの状況とスタンスを述べつつ、彼らの先輩世代に当たる松岡さんが第三者的な視点から2人と2人の周辺に関して批評を行うことで、これからはじまる議論の道筋、落としどころを探る。それらを平瀬さんがモデレートするという感じでした。

ここで観察された藤村さんと井手さんの両者の共有する問題意識として、「建築・都市に関する議論の場を作る(藤村)」「デザインの発信・説明の仕方を考え直す必要(井手)」というような、建築やデザインにおけるコミュニケーションのための言語や機会の乏しさに対する危機感というものがあるようであった。ROUNDABOUT JOURNALそしてデザイニング展の活動はこういった問題意識をエネルギーとして展開しているのであろう。

一方、両者においてそれぞれ特徴的な考えとして、「まずは専門家による専門的な議論によってこそ新しい議論の平面を見出せるのでは(藤村)」に対して「デザイナーや建築家の言語を一般の市民に対してもわかりやすくすることで議論の場をひろげたい(井手)」というような対比も見出せた。
これに関しては、東京では建築家と社会との繋がりが希薄にならざるを得ないために、まずは専門家を中心に濃密な議論の場(メディア)を用意するところから始めなければ社会と接続できない、という状況に対して、今の福岡というものがが建築家が社会に対して地縁的(?)な繋がりを持って直接接続しやすい都市環境である、というそれぞれの状況の違いから生じる社会との関わり方の方法の違いであるのでは、というような藤村さんの指摘もあった。
つまり、このような両者の違いは、今日の議論でも話題になったように『中央/地方』といった両者の二元論的な絶対的な対立構造のうちに回収してしまうのではなく、様々な要因からなる状況の違いが生み出した流動的な差異というように理解する方がいいだろう。

今日の議論は参加者(スピーカとリスナーの両者)が、これから始まる議論のための下準備をするためのものであったというように理解しているので、客観的にレポートを行った。
明日からの2日間が非常に楽しみである。今日準備したものがどう展開していくのか。今回のトークイベントの参加者を一覧して特に、“アカデミックなもの”や“ファッショナブルなもの”や、あるいは“ヒューマニズム的なもの”など、それぞれのスタンスを横断する形で議論が展開することを期待しています。誤解をおそれずにいうと、福岡の建築・デザイン界においては後者2つのスタンスが主流であるように思う。どれもそれぞれに意義のあるアプローチなのは言うまでもないが、議論の際に、それぞれが自分の得意な領域にだけ閉じこもっていては面白くない。それを乗り越える冒険の中にこそ新しい展開が見えてくるのではと考えています。
ヒヤヒヤするような議論を期待しています。

関連:
1995年以後レビュー_1
1995年以後レビュー_2_自分編



author:松本剛志
by matsumo5402 | 2009-05-02 23:00 | 晴れ
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