松本剛志の考えること
by matsumo5402
1995年以後レビュー_1
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『1995年以後』〜次世代建築家の語る現代の都市と建築〜を読んだのでレビューを書く。というのも、著者である藤村龍至さんら(TEAM ROUNDABOUTの皆さん)が企画していた、「自身のブログにレビューを書くという条件で書籍を提供する」というイベントに乗っかってみたからなのですが。

そういうわけで、僕の役割の一つとしてはおそらくこの本の販促を行うことなのですが(笑)、もちろんその真意としては僕らが巻き込まれることのできる「建築や都市や他」に関する「議論」の場を、まさに巻き起こすことに加担したいというところです。とはいっても僕の今のブログの影響力を客観的に眺めてみると、感覚としては、地方のラジオ局がガラス張りの部屋で公開ラジオ収録をやっていて、近所の皆さんがちらほら暖かいまなざしで見てくれる、加えて遠くの知り合い等がラジオ放送としてたまに聞いてくれるといったものであると思うので、僕自身はそういった身近な人にまず働きかけていくところから意識したいと思うわけです。

とまあ、大仰なことを言いますが、とりあえず普通にレビューを書きたいと思います。
ちなみにレビューは二部に分けて書いてみようと思います。前半は本の全体に関する評価。後半は内容に関する僕自身の立場を述べるという構成をとりたいと思います。

まず、前半です。

この本の基本的な構成は、藤村さんを筆頭にTEAM ROUNDABOUT(特に藤村さん)が、1971年以降にこの世に生を受けた32組の建築家に2007年から2008年の間に個別にインタビューを行い、その内容をまさにインタビューの状態のまま紙面に定着させたというものである。
つまり、現在において最もホットな建築家達の熱い主張を、生の声に限りなく近いカタチで僕らが知ることができる本なのである。これを読めば、彼らの言わんとすることの少なくとも一端を垣間見ることができるお得でセンセーショナルな本なのである。
…なのだが、実は僕が一番面白く感じたのは、彼らが自身の明確な主張をひたすら述べる状況が、同時に“藤村龍至”という存在を明らかにしていくということ。どういうことかというと、当然ながら基本的に藤村さんの言説はインタビューの中にしか現れない。しかも藤村さんは常に聞き手であるから、これまた基本的にインタビューイに対する質問と相槌にしか藤村さんは登場してこない。にもかかわらず、僕の頭の中には藤村龍至像というか、藤村さんの言わんとすることがしっかりと筋を持って理解できるわけです。(もちろん個別の内容に関しては疑問な点もあるけれども。論旨ははっきり見えるという意味で。)おそらく藤村さんが自分の土俵から相手を逃さず議論をするから、相手の動き回る様子を見ていると藤村さんの土俵のかたちが暗に見えてくるのでしょう。もちろん直接的に意見を述べる場面もたくさんあるのだが、それは必ず文脈に依存しているという点で、藤村さんのスタンスが直接的に顕在化するというよりは、“暗に”浮かび上がってくるという見方が適切だと思いました。だからこの本から藤村さんの主張を取り出そうとする時に藤村さんの発言だけを抜き出す作業をしてもほとんど意味がないと思うのです。にもかかわらず、あるいはそれゆえに、文脈の中から浮かび上がる藤村像は実にカラフルで存在感が在る。これは僕が豊富なインタビューの羅列を一気に読み干したことによる当然の効果としても理解できるかもしれないが、それでも藤村さんのジャーナリストとしての卓越した対話の技術によらない限りはここまで鮮明な“藤村龍至像”を示すことはできないだろう。
対話の仕方を多いに学べる本である。


と、まあ、このような評価を幾らしたところで藤村さんは喜びはしないだろうけども。
というのは、この本の主題は「藤村龍至のスタンスを明確にする」ということよりは、もう一歩進んで「藤村龍至が抱いている問題意識を多くの人間と共に共有したい」という部分にあると思うからだ。
もう一つ最初に述べた、「たくさんの建築家の考えていることを一気に知ることができる本」ということもこの本の面白いところであるのだが、これもまた、一歩進んで「それらを知ることによって、読者が自分自身の相対的な立ち位置を明確にする」という作業がもっとも大切なところだと思うのです。
何なのかと言うと、議論を行う準備をしましょうということだと思います。極端に言うと「現在の建築界には議論を行う土俵が用意されてないようなので、当面、僕(藤村龍至)の問題意識を土俵にしませんか。そのために皆さん、自分の立ち位置を明確にして頂きたい。」ということだろう。と、僕は考えています。そして意識的にそういう読み方をすべき本だと思うのです。


と、ここまでで読みたくなった人がいたら幸いです。他の人のレビューはここにあります。読みたくなった人は買って読んで下さい(笑)もう一回僕も読み返したいので。そして読んだらこの本片手に僕と話しましょう。
それでは後半に続きます。

後日記を書きました。090511

author:松本剛志
by matsumo5402 | 2009-03-02 01:04 | 晴れ
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